憂鬱な世界一周出発前夜

明日の早朝、徳島県から大阪に移動し、新鑑真号という船に乗り、日本を出発します。

なんだか変な気持ちです。

ずっと4年間行きたいと思っていた世界一周。実際にその日が来ると、現実感がまったくありません。

そして、現実感がないと同時に、胃袋の下あたりをくすぐられるような、不安感が押し寄せてきます。

22歳のときに行ったインド・ネパール1ヶ月の旅のときの、自分の中の勢いというものが、この4年間でなくなっているようにも感じます。

不安を感じながらも、上海の1泊目の宿を検索しようともしていない。

無職で就職の不安を感じながらも、仕事を探そうとしない、ニートのような心地です。

あんなに嬉しそうに旅の話をする自分はどこに行ってしまったのか。

荷物の準備だけはしようとバックパックに荷物を詰め込んで、背負ってみたところ、少しずつバックパッカーとしての元気が戻ってきました。

上海に到着し、うまく旅の中に入り込めるといいな。

行けばなんとかなる。

明日、行ってきます。

どうしてそんな旅に出かけなくてはならないのだろう、と何度自分に問いかけたかわからない。

だが、その答えはなかった。なかったから行くのをやめようかと思ったかというとそうではなく、なかったけれど行くことにしようかと思ったのだ。半ば憂鬱な気分を抱きながら。

……しかし、ひとたび出発してしまうと、それまでの逡巡は忘れてしまい、まっしぐらに旅の中に入っていってしまう。

– 沢木耕太郎「旅する力」
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